本記事は「卓球スタートショップ」が運営する情報メディア「卓球はじめの一歩」の記事です。記事内で紹介している商品には、当店で販売しているものが含まれます。
カットマンは台から離れて、下回転をかけて返し続ける型です。「守りの型」と呼ばれますが、実際にやっているのは守りではありません。回転量に差をつけて、相手にミスをさせる——これが得点の仕組みです。ただ拾うだけでは点は取れません。
始める前に知っておいたほうがよいことが2つあります。1つは用具の選択肢が少ないこと。当店で扱っている板282点のうち、守備型として作られているもの・商品名にカットとあるものは4点しかありません。もう1つは促進ルールです。ラリーが長い型なので、1ゲーム10分の制限に届きやすくなります(ITTF 2.15.1)。
この記事では、カットとは何か、向いている人、必要な用具、練習をどの順番で始めるかまでを扱います。型そのものの選び方は卓球の戦型に、下回転の基本はツッツキとは?にあります。
まず即答|カットマンは「拾う型」ではなく「相手にミスをさせる型」
カットマンの試合を見ると、下がって拾い続けているように見えます。けれど拾い続けるだけでは、いつか必ず抜かれます。相手のほうが打つ回数が多いので、確率の勝負では不利だからです。
では何で点を取るのか。回転量の差です。同じ動作で、よく切れたカットと、あまり切れていないカットを混ぜます。相手は同じ動作を見ているので、切れているつもりで打つとオーバーし、切れていないつもりで打つとネットにかかります。
- 回転量に差をつける。よく切る/あまり切らないを同じ動作で打ち分けます
- 長さを変える。深いカットと、台の上で止まる短い返球を混ぜます
- 攻める球を混ぜる。相手が下がったところへ、突然攻めます
つまりカットマンは相手の判断を狂わせる型です。「粘り強ければできる」という話ではありません。
今すぐ確かめる手順:自分のツッツキを10球打って、相手に「どれが切れていましたか」と聞いてみてください。全部同じと言われるなら、まだ回転量に差がつけられていません。ここが出発点です。
カットとツッツキは何が違うのか
どちらも下回転をかける技ですが、立ち位置も動作も別物です。ここを混同したまま練習すると、どちらも中途半端になります。
| カット | ツッツキ | |
|---|---|---|
| 立ち位置 | 台から離れる(1〜3m) | 台のすぐ近く |
| 打点 | 落ちきったところ(腰〜ひざの高さ) | バウンドの上がり際〜頂点 |
| 振り | 上から下へ大きく振り下ろす | 小さく前へ押し出す |
| 返る球 | 深く、低く、回転量が多い | 短く止まる |
| 対応する球 | 相手の強打・ドライブ | 相手の下回転・短い球 |
大事なのは打点の高さです。カットは落ちきってから打ちます。早く打とうとすると振り下ろす距離が足りず、回転がかかりません。「待てるかどうか」が最初の関門になります。
回転そのものの見分け方は卓球の回転にまとめてあります。自分がかけた回転を相手がどう感じるかを知らないと、切る量の差を作れません。
向いている人・向いていない人
好みではなく条件で決まる部分があります。条件のほうから確認してください。
| こういう人 | 向き・不向き | 理由 |
|---|---|---|
| 前後に動くのが苦にならない | 向いている | カットは下がるだけでなく、短い球のたびに台へ入ります。移動量は攻撃型より多くなります |
| 同じことを続けられる | 向いている | 1本のラリーで10球以上返すことが普通にあります |
| 相手のミスを待てる | 向いている | すぐ決めたい人には、待つ時間が苦痛になります |
| 部にカットマンが1人もいない | 難しくなる | 教われる人も、慣れた練習相手もいない状態から始めることになります |
| 練習相手を確保しにくい | 難しくなる | カットの練習は、相手に何十本も打ち続けてもらう必要があります |
| 試合まで時間がない | 難しくなる | 型を変えると、当面は勝てなくなる期間が生じます |
4番目と5番目は、本人の資質ではなく環境の話です。ここが厳しい場合、いきなり全部をカットに変えるのではなく、バック側だけカットで返す形から始めるという進め方もあります。
用具① 板は選べる本数が少ない(実数)
カット用(守備型)の板は、攻撃用と作りが違います。ブレードが大きめで、弾みを抑えてあるのが基本です。弾む板だと、下がった位置から相手コートに収まらなくなるためです。
当店の板は282点ありますが、守備型として作られているもの・商品名にカットとあるものは4点です。
| 商品 | メーカー | 握り | 税込価格 |
|---|---|---|---|
| ゴースト | ジュウイック | シェーク | ¥9,900 |
| TOMETATSU(トメタツ)反転式 | ジュウイック | ペン | ¥9,900 |
| Dr.Neubauer グランドマスター | ジュウイック | シェーク/ペン | ¥15,400 |
| 剛力スーパーカット FL | ニッタク | シェーク | ¥36,300 ※現在お取り扱いできません |
攻撃用を含めた282点と比べると、選択肢は桁が違います。これは当店だけの事情ではなく、作られている本数そのものが少ないことの反映です。
- 重さを選べない。「軽い守備型」「重い守備型」の両方はそろいません
- 予算で選べない。¥9,900から¥36,300まで、あいだの選択肢が限られます
- 同じ機種を買い直せないことがある。廃番になると代わりを探すのに苦労します
なお、攻撃用の板でカットを打てないわけではありません。始めたばかりの段階なら、いま持っている板のままで練習できます。守備型の板が要るのは、下がった位置から安定して返せるようになってからです。板の選び方そのものは卓球ラケットの選び方にあります。
用具② バック面に何を貼るか
カットマンの用具でいちばん考えることになるのが、フォアとバックで違うラバーを貼るかどうかです。よくある構成は「フォア=裏ソフト、バック=粒高または表ソフト」です。
| ラバー | 性質 | 当店で買える本数 | 価格 |
|---|---|---|---|
| 裏ソフト | 自分から回転をかけられる。攻めに使える | 76点 | ¥2,200〜 |
| 表ソフト | 相手の回転の影響を受けにくい。球離れが早い | 25点 | ¥3,300〜 |
| 粒高 | 相手の回転をそのまま返す。変化が大きい | 12点 | ¥2,750〜 |
粒高は、相手のかけた回転をそのまま返すように働きます。つまり相手が強く打つほど、返る球の変化も大きくなります。カットマンが使うのはこの性質のためです。ただし自分から回転をかけにくくなるので、攻める場面では扱いが難しくなります。
規則では、粒が外を向いた一枚ラバーは接着剤を含めて2.05mm未満、スポンジ付きは4.05mm未満と決まっています(ITTF 2.4.3)。また一枚ラバーは粒が1平方センチあたり10個以上30個以下で均等に並んでいることも定められています(ITTF 2.4.3.1)。粒の密度まで規則で決まっているということです。
当店で買える粒高では、ファントム009(ヤサカ・¥2,750)や、ウォーレスト(ニッタク・¥3,300)などがあります。表ソフトではカール P2V(ヴィクタス・¥4,620)などです。
種類ごとの違いと選び方は卓球ラバーの種類と選び方にまとめてあります。両面とも裏ソフトのままカットを始めても問題ありません。変えるのは、切る量の差が作れるようになってからです。
促進ルールを知らずにカットマンは始められない
カットマンにとって、いちばん大きく効いてくる規則が促進ルールです。ラリーが長い型なので、ほかの型より届きやすくなります。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 2.15.1 | 1ゲームが10分続くと促進ルールに入る(両者が求めればいつでも入る) |
| 2.15.2 | ただしすでに合計18点入っていれば導入しない |
| 2.15.4 | 導入後は1点ごとにサーブ交代。レシーブ側が1つのラリーで13回正しく返球すれば、レシーブ側の得点 |
| 2.15.6 | 一度導入されると、試合が終わるまで続く |
ここから読み取れることが3つあります。
- 点が動かない試合ほど導入される。18点入っていれば入らない(2.15.2)ので、長いラリーが続いて点差がつかない展開ほど条件に当てはまります
- 導入後は、相手が13回返してしまう前に決めなければならない(2.15.4)。レシーブ側が1つのラリーで13回返せばレシーブ側の得点になるので、自分がサーブのときに粘る形は使えなくなります
- 1ゲームで終わらない(2.15.6)。試合の残り全部が同じ条件になります
だからカットマンは、自分がサーブのときに攻める形を必ず用意します。「守り続けて相手のミスを待つ」だけでは、促進ルールに入った時点で勝ち筋がなくなるためです。仕組みそのものは卓球の試合時間で扱っています。
練習の順番|「下がって拾う」から始めない
いきなり台から離れて拾う練習を始めると、回転のかかっていないカットが身についてしまいます。それは相手にとってただの浮いた球で、練習にもなりません。
- ① ツッツキで切る量を変える。台の近くで、よく切る/あまり切らないを打ち分けます
- ② 台の近くでカットの動作を作る。上から下へ振り下ろす軌道を、素振りで固めます
- ③ 1歩下がって打つ。相手にゆるいドライブを打ってもらい、落ちきってから返します
- ④ 前後の動きを入れる。相手に短い球を混ぜてもらい、台へ入って処理します
- ⑤ 切る/切らないを混ぜる。ここで初めて得点の形になります
①をとばさないでください。切る量を変えられないカットマンは、ただ拾っているだけになります。①は台の近くでできるので、下がるスペースがない練習場所でも進められます。
④の前後の動きは、カットマンでいちばん体力を使う部分です。卓球のフットワークで扱っている基本の動きに、前後の移動を足す形になります。球出しの手順は卓球の多球練習にあります。
今すぐ確かめる手順:②までは一人でできます。ラケットを持って、肩の高さから、ひざの高さまで振り下ろす動作を10回。振り終わりでラケットの面が上を向いていることを確認してください。下を向いていたら、切る動作になっていません。
中学・高校でカットマンになるときの現実
部活の練習は、攻撃型を前提に組まれていることが多いです。ワンコースのラリーも、多球練習も、打つ側と受ける側の役割が攻撃型を想定して作られています。そのなかでカットの練習をするには、段取りが要ります。
- 顧問に伝える。練習メニューの一部を変える必要が出ます
- 打ち続けてくれる相手を確保する。カット練習は相手の負担が大きくなります
- 相手にも得がある形にする。カットを打ち込む練習は、攻撃型にとっても下回転を持ち上げる練習になります
3つ目が現実的にいちばん大事です。相手の練習にもなる形にできれば、練習相手は続けて確保できます。カットを持ち上げる練習は、攻撃型にとってドライブのいちばん実戦的な練習になります。
もう一つ、試合での事情があります。カットマンと当たった経験のない相手は、返し方を知りません。これは有利に働きます。逆に自分がカットマンと当たったときの対応は卓球の戦型にまとめてあります。
一人でも試せること
カットは相手が必要な技だと思われがちですが、始めの2段階は一人でできます。台が使えない日でも進められる部分があります。
- 振り下ろす素振り。肩からひざへ。振り終わりで面が上を向いているか確認します
- 下回転サーブで切る量を変える。同じ動作で、よく切る/あまり切らないを打ち分けます
- 前後の移動。台から1歩下がる、台へ1歩入るを繰り返します。ラケットを持ったまま行います
2番目は、そのまま試合で使えます。サーブで切る量を変えられるようになると、相手のレシーブが揃わなくなり、3球目で攻める形が作れます。促進ルールへの備えにもなります。サーブの出し方は卓球のサーブの種類にあります。
よくある質問
まとめ
カットマンは拾う型ではなく、回転量の差で相手にミスをさせる型です。同じ動作で「よく切る」「あまり切らない」を打ち分けられるかどうかが、すべての出発点になります。
用具は選択肢が少ないことを先に知っておいてください。当店の板282点のうち守備型は4点、粒高ラバーは12点です。ただし始めるのに専用の用具は要りません。今の板と裏ソフトのままで、ツッツキの切る量を変える練習から始められます。
そして促進ルール。1ゲーム10分で入り(2.15.1)、入るとレシーブ側が13回返せばレシーブ側の得点(2.15.4)、試合の終わりまで続きます(2.15.6)。守るだけの形では、ここで勝ち筋がなくなります。自分のサーブのときに攻める形を、練習の最初から並行して作ってください。
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