本記事は「卓球スタートショップ」が運営する情報メディア「卓球はじめの一歩」の記事です。記事内で紹介している商品には、当店で販売しているものが含まれます。
球出しは「同じ場所へ、同じ高さで、2秒に1球」から始めます。速く出す必要も、変化をつける必要もありません。1ブロックは20本か5分で区切り、それを3セット組んだら、最後だけコースをランダムにします。
多球練習は、日本卓球協会の卓球用語集で「たくさんのボールを送球者に連続して送球してもらい、連続して打球する練習のこと」と定義されています。球を出す側の呼び名は「送球者」です。反対語は「一球練習」=1個のボールで行う練習で、同じ用語集に載っています。この記事は、その送球者を任された人のための手順書です。
扱うのは、立ち位置から区切り方、必要な球数、集め方、そして正直に言っておきたいデメリットまでです。1回の練習時間を何に何分割り振るかは卓球の練習メニュー|限られた時間を何に割り振るかにまとめてあるので、メニュー全体を組みたい人はそちらを先に読んでください。
まず即答|球出しは「同じ場所へ、同じ高さで、2秒に1球」
球出しで決めることは3つだけです。どこへ、どのくらいの高さで、どのくらいの間隔で出すか。この3つを固定して20本続けられれば、送球者の仕事は成立します。
- 場所=相手コートの1か所。台の上に消しゴムを置き、その周り30cm四方をねらう
- 高さ=ネットの上端を10〜20cm越える高さ。ネット上端は打球面から15.25cm(ITTF 2.2.3)なので、床からではなく台の面から測る
- 間隔=2秒に1球。打つ人が打ち終わって、ラケットが戻ったのを見てから次を出す
速く出すのは上達ではありません。間隔が縮むほど、打つ人はフォームを省略して手だけで返すようになります。テンポを上げるのは、狙った場所に20本中15本が落ちるようになってからで十分です。
今すぐ確かめる手順:ラケットを持ったまま「イチ、ニ、イチ、ニ」と2秒に1回のリズムで声に出してみてください。思っているより遅いはずです。その遅さが、最初に出すべきテンポです。
球出しの手順|立ち位置・球の持ち方・出し方
① 立ち位置=台の角の外側、半歩下がる
送球者は、打つ人から見た向こう側のコートに立ちます。台の真ん中の正面ではなく、台の角の外側に立って、エンドラインから半歩ほど下がります。真正面に立つと、打った球が自分の顔や胸に飛んできて、よけるたびに球出しが止まります。
右利きなら、自分から見て台の左角の外(打つ人のフォア側)に立つと、球が体に向かって返ってきにくくなります。
② 球の持ち方=空いている手に3個まで
ラケットを持っていないほうの手のひらに、球を3個載せます。指の間にはさむのではなく、手のひらの上に転がしておいて、親指で1個ずつ前へ送り出します。5個以上持つと、出すたびに落ちて拾いに行くことになり、テンポが崩れます。
かごは、ラケットを持っていない側の足元に置きます。台の角に載せると、返ってきた球が当たってひっくり返ります。3個出したら手を下げて3個つかむ、この往復を1つの動作にすると、補充で止まらなくなります。
③ 出し方=手で放るか、ラケットで打つか
出し方は2通りあります。手で下から放る方法は、球速は出ませんが高さがそろいます。ラケットを覚えている途中の人や、初日の人に出すときはこちらです。もう1つはラケットで打つ方法で、自分の手から落とした球を自分側のコートに1バウンドさせ、上がってきたところを相手コートへ送ります。回転や球速をつけられるぶん、高さがばらつきやすくなります。
迷ったら手で放るほうから始めてください。送球者の目的は「同じ球を続けること」であって、いい球を出すことではありません。ラケットに切り替えるのは、手で20本連続して同じ場所に落とせるようになってからです。
④ 数を声に出す
出しながら「1、2、3……」と声に出して数えます。打つ人は残り何本かが分かるので、最後まで足を止めません。声を出しにくければ、5本ごとに「5」「10」と区切りだけ言えば足ります。
今すぐ確かめる手順:手のひらに球を3個載せ、親指で1個ずつ前へ転がして落としてください。3個とも落とさずに送り出せますか。落ちるなら、手のひらを少し丸めて、球が転がる溝を作ります。
1ブロックは20本か5分で区切る|3段階で難しくする
「何本で区切るか」を先に決めていないと、多球は終わりのない作業になります。おすすめは20本です。声に出して数えられる上限がこのあたりで、床に散る球も1人分20球で収まるので、集める量が読めます。時間で切るなら5分です。時計を見ずに済むよう、スマホのタイマーを鳴らしてください。
そのうえで、同じ技を3ブロック続けて、少しずつ難しくします。この3段階が、あとで説明するデメリットの1つ目を打ち消す仕掛けになります。
| 段階 | 出し方 | 打つ人が知っていること | 本数 |
|---|---|---|---|
| 第1 | 同じ1か所へ | 場所もタイミングも分かっている | 20本 |
| 第2 | 2か所へ、決めた順番で交互に | 次がどちらか分かっている | 20本 |
| 第3 | 2か所へ、順番を言わずに | 次がどちらか分からない | 20本 |
第3段階で急にミスが増えても、それが本当の実力です。第1段階で入っていたのは「次がどこか知っていたから」で、試合には持ち込めません。第3段階の成功率が上がるまで、同じ3ブロックを別の日にもう一度組んでください。
足を動かす練習を混ぜるときは、第2段階の2か所を左右に広げます。どこまで広げるかは、打つ人が戻れる範囲までです。動き方そのものは卓球のフットワーク|3つの基本の動きと家でできる練習にまとめてあります。
今すぐ確かめる手順:紙に「20本/20本/20本」と3行書き、右側に「同じ1か所」「2か所を順番に」「2か所をランダム」と書き足してください。それが今日のブロック表です。台に置いておけば、出す人が交代しても同じ練習が続きます。
多球練習のデメリット4つと、その場でできる対処
多球には向いていないことがあります。先に知っておくと、練習の組み方が変わります。
① そのままでは試合で使えない球になる
送球者が出す球には、サーブの回転も、相手の狙いも入っていません。打つ人は「次にどこへ、どのくらいの高さで来るか」を知った状態で20本打っています。試合では、来る場所も回転も分かりません。多球ばかり続けると、決まった球が来る前提のフォームが固まります。
対処は3つです。1つ目は、前の章の第3段階(コースを言わずに出す)を必ず入れること。2つ目は、多球のブロックが終わったら、同じ技を一球練習で3分やること。用語集どおり1個の球でラリーにすると、返ってくる球が毎回違うので、多球で作った形が本物かどうかがすぐ分かります。3つ目は、1回の練習で多球が半分を超えないようにすることです。
② 球拾いに時間を取られる
20本出せば、20球が床とコートに散ります。2人で交代しながら回せば40球。これを2人で集めるのに1分かかるとすると、1回の練習で6ブロック回せば6分が消えます。週3回なら18分、1か月では1時間を超えます。
対処は「拾う回数を減らす」ことです。ブロックごとに拾うのをやめ、3ブロック出し切ってから1回だけ全員で集める。そのためには球の数が要ります。何個要るかは次の章で計算します。
③ 出す人の練習時間が消える
いちばん起きやすいのがこれです。学年が下の人に球出しを任せ続けると、その人は2時間の練習で1球も打たないまま帰ることになります。多球は打つ人にとって効率のよい練習ですが、出す人にとっては打つ機会がゼロの時間です。
対処は、20本ごとに役割を回すことです。3人1組なら「出す・打つ・拾う」を20本ごとに交代します。2人なら、20本出したら20本打つ。
④ 球が傷み、床の球が危ない
多球で使った球は、床に落ち、蹴られ、踏まれます。少しへこんだ球やひびの入った球は跳ね方が変わりますが、打っている本人には分かりません。球のせいで飛ばなかったミスを、自分のフォームのせいだと思い込むのがいちばん困ります。
もう1つは足元です。床に転がった球を踏むと、体重が乗った足がそのまま滑ります。ブロックを始める前に、打つ人の足元1歩ぶんだけは片付けてください。ひねったところが腫れる、痛みが翌日も続くというときは、自己判断せず整形外科で診てもらってください。
- 試合で使えない球になる→ 第3段階(ランダム)を入れ、多球のあとに一球練習を3分
- 球拾いに時間が消える→ ブロックごとに拾わず、3ブロックまとめて1回で集める
- 出す人が打てない→ 20本ごとに「出す・打つ・拾う」を交代する
- 球が傷む・床の球で滑る→ 練習後にかごから傷んだ球を抜き、始める前に足元を片付ける
今すぐ確かめる手順:いま部にある球を全部かごから出し、10球ずつ床に並べて数えてください。数えながら、割れ・へこみ・落としたときの音が違う球をよけます。残った数が、いま多球に使える球数です。
球は何個要るか|人数と本数から逆算する
「たくさん」では買えないので、式にします。拾う回数を減らすことがそのまま練習時間を増やすので、基準は「拾う前に何人回したいか」です。
- 1ブロックの本数(20本)を決める
- 同時に多球をする台数をかける
- 拾う前に回したい人数をかける
- その合計に1割を足す(傷んで抜く分の予備)
| 場面 | 台数 | 拾う前に回す人数 | 計算 | 用意する球数 |
|---|---|---|---|---|
| 2人で交代して打つ | 1台 | 2人 | 20×1×2=40 | 50球 |
| 3人で役割を回す | 1台 | 3人 | 20×1×3=60 | 70球 |
| 部で2台を多球にあてる | 2台 | 3人 | 20×2×3=120 | 130球 |
| 部で4台を多球にあてる | 4台 | 3人 | 20×4×3=240 | 260球 |
まとめ買い用の袋・箱で買うと、1球あたりの値段が下がります。当店の実際の販売価格で割ると次のようになります。TWC スクール・トレーニングボール 40+【100球入り】は¥3,850で、1球あたり約39円です。
- VT40+ トレーニングボール【100球入り】/¥3,850/1球あたり約39円
- バタフライトレーニングボール40+【120球入り・10ダース】/¥6,380/1球あたり約53円
- Cトップトレ球【600球入り・50ダース】/¥49,500/1球あたり約83円
1台か2台で回すなら100球入りが1袋、部全体で4台を多球にあてるなら120球入りを2箱か600球入りを1箱、という買い方になります。上の式で出た数より少し多めを選んでください。傷んだ球を抜いていくと、使える数は必ず減っていきます。
今すぐ確かめる手順:上の式に、自分のところの台数と人数を入れて計算してください。出た数から、前の章で数えた「いま使える球数」を引きます。残った数が、そのまま買い足す数です。
球を集める手順|散る前に止めて、まとめて拾う
まず「出ていく方向」を塞ぐ
拾う時間の大半は、遠くまで転がった球を追いかける時間です。集める工夫より先に、球が出ていく方向を塞ぐほうが効きます。台の後ろと、隣のコートとの境目に仕切りを置くと、球は台の周りに留まります。
体育館の備品にフェンスがあればそれを使います。無ければ、チューブフェンス(¥9,350)のような仕切りを1枚、球がいちばん逃げる方向に置くだけでも変わります。
集める順番を決めておく
- 打つ人は拾わない。次のブロックの構えのまま待つ(順番を止めないため)
- 誰かが「集球」と声をかけ、全員が同時に始める(1人だけ拾い続けるのを防ぐ)
- かごを床に置き、外側から内側へ球を寄せてからまとめて入れる
- 台の上とネットの下は最後に見る(ここに残った球が次のブロックで邪魔になる)
- かごを送球者の足元に戻して終わり
拾う道具と、入れておく袋
床にかがんで1球ずつ拾うと、腰も時間も消耗します。柄の先にかごが付いた集球器具を使うと、立ったまま転がして集められます。当店ではボールスクープ(¥2,750)やボール・アミーゴ(¥2,750)を扱っています。商品名に「ヘッド」とだけ書かれているものは先端の交換部品なので、何が入っているかを商品ページで確かめてから買ってください。
球をまとめて運ぶ袋も1つあると、練習の始めと終わりが速くなります。メニーズボールバッグ(¥1,980)やヘクサム・ボールバッグ(¥2,200)のような多球用の袋は、練習球をまとめて持ち運ぶためのものです。
今すぐ確かめる手順:いつも使っている場所を紙に上から見た図で描き、球が転がって出ていく方向を矢印で3本書いてください。矢印がいちばん長い方向が、最初に塞ぐ場所です。
出す人がうまいと、打つ人の伸び方が変わる
球出しは雑用ではありません。出す球がばらつくと、打つ人は毎回違う修正をすることになり、フォームが固まりません。逆に、同じ球が20本続くと、打つ人は1つのことだけ直せます。送球者の腕前が、そのまま練習の質になります。
自分の球を数字で見る
うまい・下手を感覚で言い合っても直りません。数えます。台の上に消しゴムを1つ置き、その周り30cm四方をねらって20本出し、何本が入ったかを数えてください。最初は20本中10本、慣れてきたら15本を目安にします。
落とす場所の目安も決めておきます。台の長さは2.74m(ITTF 2.1.1)なので、相手コートは1.37m。その手前半分ではなく奥半分に落とすと、打つ人は下がって打つ形になり、試合に近くなります。ネットの上端は打球面から15.25cm(ITTF 2.2.3)なので、その上を10〜20cm通す高さを一定に保ちます。
ノートには「出した人」も書く
同じ人が同じ技をやっても、出す人が変われば成功率は変わります。練習ノートに打った本数だけ書いても、翌週と比べられません。「技/本数/入った数/出した人」の4つを書いておくと、成功率が落ちた原因が打つ側なのか出す側なのかを切り分けられます。
出す人の一人練習
球出しは、相手がいなくても練習できます。台が1台空いていれば、反対側に消しゴムを置き、かごを足元に置いて20本出すだけです。入った数を数えて、20本を3セット。これを2回やれば、次の練習で出す球が変わります。人に教える立場に立ったときの進め方は卓球の教え方|初めての人に教えるときの順番と声のかけ方にまとめてあります。
今すぐ確かめる手順:台が使えるなら、反対側に消しゴムを1つ置いて20本出し、周り30cm四方に落ちた本数を数えてください。10本を切ったら、まずは高さを一定にすることだけに絞ります。
多球に使う球|練習球でよい理由と、選ぶときの2点
競技規則がボールについて決めているのは、直径40mm(ITTF 2.3.1)、重さ2.7g(ITTF 2.3.2)、プラスチック製で白または橙、つや消し(ITTF 2.3.3)の3点です。練習球もこの枠の中で作られています。多球練習に試合球を使わなければならない決まりはありません。
多球では球が床に落ち、蹴られ、踏まれます。値段の高い試合球をここに回すと、傷むのが早いだけです。試合球と練習球で何がどう違うのかは卓球の試合球と練習球の違い|どっちを買う?値段と選び方で価格まで含めて比べています。
選ぶときの2点
- 1つのかごに1銘柄だけ入れる。跳ね方の違う球が混ざると、打つ人は自分のミスだと思い込みます。銘柄が変わるときは、かごの中身を全部入れ替えてください
- 色は白か橙のどちらか(ITTF 2.3.3)。床や壁、着ているシャツと色が近いと、飛んでくる球も床に落ちた球も見つけにくくなります。練習する場所の床の色を見てから決めます
ラージボールで多球をするときは、球を分けてください。ラージボールは直径44mm・重さ2.2〜2.4g・オレンジと決められていて(日本卓球協会 ラージボール卓球ルール 第4条)、硬式の40mm球とは飛び方が違います。同じかごに入れると、出す側も打つ側も混乱します。
今すぐ確かめる手順:かごの中の球を銘柄ごとに分けてください。2種類以上入っていたら、多く残ったほうを多球用にして、少ないほうは別の袋に移します。1つのかごに1銘柄が原則です。
よくある質問
Q. 1回の練習で多球は何分やればいいですか?
A. 練習全体の割り振りで決まるので、この記事では「1ブロック20本か5分」という区切りだけを決めます。2時間をどう割るかは卓球の練習メニューに例があります。
Q. 球出しの速さは、どのくらいまで上げていいですか?
A. 「20本中15本が狙った場所に落ちる」が保てる範囲までです。それを超えると、打つ人はフォームを省略して手だけで返し始めます。速さは練習の目的ではありません。
Q. 球は増やせば増やすほどいいですか?
A. 拾う回数は減りますが、かごが重くなり、傷んだ球の管理が難しくなります。1台あたり100球を超えるなら、かごを2つに分けて、銘柄と状態を別々に管理してください。
Q. 出す人がいないときはどうしますか?
A. 多球は送球者がいて成立する練習なので、1人のときは成立しません。台が空いているなら、この記事の「出す人の一人練習」に切り替えて、球出しそのものを練習してください。出す腕前が上がれば、次の練習で人の役に立ちます。
Q. 顧問や先輩がいない部で、多球を始めても大丈夫ですか?
A. この記事の第1段階(同じ1か所へ20本)だけなら、生徒だけでも組めます。難しくするのはそのあとです。使う球の種類と本数が決まらないうちに、コースを増やさないでください。
まとめ
- 場所・高さ・間隔を固定する。同じ1か所へ、ネット上端(15.25cm/ITTF 2.2.3)の上を10〜20cm、2秒に1球
- 台の角の外側に半歩下がって立ち、空いている手に球を3個、かごは足元
- 20本で区切る。同じ1か所 → 2か所を順番に → 2か所をランダム、の3ブロック
- 20本ごとに「出す・打つ・拾う」を交代する。出す人だけが打てない時間を作らない
- 球数は「20本×台数×回す人数+1割」で計算し、3ブロックまとめてから1回で拾う
- 1つのかごに1銘柄。練習後に傷んだ球を抜く
多球は、打つ人にとっては短い時間で本数を打てる練習で、出す人にとっては打てない時間です。この2つを同じ人がずっと背負わない形にしておけば、多球は部の練習に組み込めます。まず必要な球数を計算して、足りない分を用意するところからです。
球出しの高さやテンポは、文章より一度見てもらうほうが早く直ります。当サイトの運営者は卓球のコーチをしています。球出しの手順を含めて見てほしいという方は、お問い合わせからご相談ください。
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