本記事は「卓球スタートショップ」が運営する情報メディア「卓球はじめの一歩」の記事です。記事内で紹介している商品には、当店で販売しているものが含まれます。
卓球が強くなるために筋トレはいるのか。「卓球よりきついことをする」ためではなく、「卓球では力がかからない向きに負荷をかける」ためならいる、が結論です。国立健康・栄養研究所が公開しているメッツ表(身体活動の強さの一覧)で数字を見ると、卓球は4.0メッツ、ウェイトを使った複合的な筋トレ(8〜15回繰り返す)は3.5メッツ。運動の強さだけで言えば、卓球のほうが上です。
この記事では、メッツ表の数字で筋トレと卓球を並べたうえで、国が定めた部活動の活動時間の基準、その中で筋トレをどこに置くか、卓球の動きから逆算して鍛える場所、道具を使わずに家でできる種目、やってはいけないこと、走り込みの位置づけまでをまとめます。種目はメッツ表に名前が載っているものだけを挙げます。効き目を保証するものではなく、何をどれくらいの強さでやることになるのかを数字で示すための記事です。
練習メニュー全体の組み立ては卓球の練習メニュー、体の痛みが出ているときは卓球の怪我を先に読んでください。この記事は台を使わない体づくりだけを扱います。
まず即答|筋トレは「きつさ」を足す道具ではない
- 強さでは卓球が上——卓球4.0メッツに対し、ウェイトの複合種目(8〜15回)は3.5メッツ。きつさを求めて筋トレをする理由は薄い
- 意味があるのは「向き」——卓球は横と前に動く競技で、上下方向にはほとんど力を使わない。そこを補うのが筋トレ
- 時間は国の基準で決まっている——部活動は週2日以上の休養日、週当たり11時間程度が上限の目安(文部科学省・令和7年12月のガイドライン)
- 休養日に足さない——休養日は休むために置かれた日。筋トレは練習時間の中か、練習前後の10分に入れる
「筋トレをすれば強くなる」と書いてある記事は多くありますが、どのくらいの効果があるかを数字で示したものはほとんどありません。この記事では、公開されている数字で確かめられることだけを書きます。
今すぐ確かめる手順:いまの自分の1週間を紙に書き出してください。部活が何曜日に何時間あるかだけで構いません。合計が11時間を超えているなら、筋トレを足す前に、その中身をどう使うかを考えるほうが先です。
数字で見る|卓球は4.0メッツ、筋トレは2.8〜8.0メッツ
「メッツ」は運動の強さを表す単位で、座って安静にしている状態を1.0としたときの倍数です。国立健康・栄養研究所が公開している一覧から、卓球と、道具を使わない体操・ウェイトを使う種目を並べます。
| 活動 | メッツ | 一覧での書かれ方 |
|---|---|---|
| 卓球 | 4.0 | 卓球(table tennis, ping pong) |
| 腹筋運動・クランチ(楽な労力) | 2.8 | 健康体操(例:腹筋運動、クランチ):楽な労力 |
| 腕立て伏せ・腹筋・懸垂・ランジ(ほどほど) | 3.8 | 健康体操(例:腕立て伏せ、腹筋運動、懸垂、足や手を突き出す運動):ほどほどの労力 |
| 背筋を使う運動・階段の上り下り | 3.5 | 健康体操:楽からほどほどの労力、全般 |
| ウェイトの複合種目(8〜15回) | 3.5 | レジスタンス(ウェイト)トレーニング:複合的エクササイズ、8〜15回繰り返す |
| サーキットトレーニング(ほどほど) | 4.3 | サーキットトレーニング:ほどほどの労力 |
| ウェイトのスクワット | 5.0 | レジスタンス(ウェイト)トレーニング:スクワット |
| 腕立て・腹筋・懸垂・ジャンピングジャック(きつい) | 8.0 | 健康体操:きつい労力 |
読み取れることは3つです。
- ゆっくりやる筋トレは、卓球より軽い——2.8〜3.8メッツは卓球の4.0を下回る。つまり「練習の代わりに筋トレ」では運動量が減る
- きつくやれば卓球の倍になる——8.0メッツ。ただしこれは休まず続けたときの数字で、家で10分やる場合の実態とは違う
- 同じ「筋トレ」でも幅が3倍近くある——2.8と8.0では別の運動。「筋トレをやった」だけでは何もわからない
だから、筋トレを練習の置き換えとして考えるのはやめてください。台に立てる時間は、台に立つことに使うのが、数字の上でも合理的です。
そもそも時間が足りない|国の基準は週11時間程度
中学生・高校生の場合、練習に使える時間には国の基準があります。文部科学省が令和7年12月に出した『部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン』は、活動時間と休養日について次のように書いています。
| 項目 | ガイドラインの記述 |
|---|---|
| 休養日 | 週2日以上の休養日を設定すること |
| 1日の活動時間 | 長くとも平日は1日2時間程度、休日は1日3時間程度とすること |
| 週当たりの活動時間 | 11時間程度の範囲内とすること |
| その他 | 長期休業中に一定期間のオフシーズンを設定すること |
このガイドラインは、根拠として公益財団法人日本体育協会が平成29年12月に示した「休養日を少なくとも1週間に1〜2日設けること、さらに週当たりの活動時間における上限は16時間未満とすることが望ましい」という見解を挙げたうえで、それよりさらに短い11時間程度を目安にしています。
また、学校の部活動と地域のクラブの両方に参加する場合は、参加する活動全体を通算して11時間程度の範囲内とする、とも書かれています。
この数字が意味すること
週11時間は、平日2時間を3日と休日3時間を1〜2日で、ほぼ埋まります。つまり「もっと練習する」という方向は、制度の上で塞がれています。残っているのは次の2つだけです。
- 同じ時間の中身を変える——球数を増やす、目的を1つに絞る
- 台がなくてもできることを、すきま時間に置く——ここに筋トレと素振りが入る
練習の中身の組み替え方は卓球の練習メニュー、台を使わない練習は卓球の一人練習メニューにまとめています。
今すぐ確かめる手順:自分の部の休養日が何曜日かを、顧問の先生に確かめてください。ガイドラインは学校の部活動について「週間、月間、年間単位での活動頻度・時間の目安を定めることも考えられる」と書いており、計画の策定と公表まで求めているのは認定を受けた地域クラブ活動のほうです。つまり学校の部活では、休養日が明文になっていないこともあります。まず聞いてみてください。そこが決まれば、筋トレをどこに置けるかも決まります。
何を鍛えるか|卓球の動きから逆算する4か所
卓球の試合を横から見ると、体は次の4つのことをしています。どれも観察すれば分かることで、特別な測定は要りません。
| 卓球でしている動き | 使っている場所 | そこに負荷をかける種目(メッツ表の名前) |
|---|---|---|
| ひざを曲げた低い姿勢を保ち続ける | 太もも・お尻 | スクワット/ランジ(足を前に突き出す運動) |
| 左右に小さく動いて止まる | お尻の横・足首 | ジャンピングジャック(跳びながら手足を開閉する) |
| 体をひねって戻す | おなかの横・背中 | 腹筋運動/クランチ/背筋を使う運動 |
| ラケットを前に運ぶ | 胸・肩・背中 | 腕立て伏せ/懸垂 |
注意してほしいのは、この表は「ここを鍛えれば強くなる」という表ではないことです。卓球の動きの中で使われている場所と、メッツ表に名前が載っている種目を並べただけのものです。
それでも並べる意味はあります。卓球は上下方向にほとんど力を使わない競技だからです。走る・跳ぶ・持ち上げるという動きが少ないため、台の上だけで練習していると、その向きの力がつく機会がありません。ここを補うのが、この記事でいう筋トレです。
家でできる10分|道具なしの5種目
ここで挙げるのは、メッツ表に名前が載っている種目だけです。器具は使いません。回数は、フォームが崩れる手前でやめるのが基準で、決まった数はありません。
- ジャンピングジャック 1分——跳びながら手足を開いて閉じる。体を温める役割。ここを飛ばさない
- スクワット——足を肩幅に開き、いすに座るようにお尻を下げて戻す。ひざがつま先より前に出ないところまで
- ランジ——片足を前に大きく出して、後ろのひざを床の手前まで下げて戻す。左右を同じ回数
- 腕立て伏せ——手は肩幅より少し広く。床までつけられない人は、ひざをついた形から始める
- 腹筋運動(クランチ)——あおむけでひざを立て、背中の上のほうだけを床から離す。首を手で引っ張らない
この5つで、前の章の4か所すべてに触れます。所要時間は、間の休みを入れて10分前後です。
回数と頻度の考え方
回数を増やすより、同じ動きを正しく繰り返せる範囲で止めるほうが先です。メッツ表の「ほどほどの労力」は3.8メッツで、これは会話ができる程度の息づかいで続けている状態にあたります。声が出せないほどきついなら、それは8.0メッツ側の運動で、練習の前にやると台の上の動きが雑になります。
頻度は、次の章のとおり練習がある日に置いてください。
いつやるか|休養日には足さない
筋トレをどこに置くかは、ガイドラインの読み方で決まります。休養日は、「成長期にある生徒が、学校内外の活動、食事、休養及び睡眠等のバランスのとれた生活を送ることができるよう」置かれた日です。そこを筋トレで埋めると、休養日を置いた意味がなくなります。
| 置く場所 | 向き・不向き | 理由 |
|---|---|---|
| 練習の前(10分) | 向く | ジャンピングジャックとスクワットで体を温めてから台に入る。そのまま練習に入るより動きが出る |
| 練習の後(10分) | 向く | 台の時間を削らずに足せる。腕立て・腹筋はこちらに置く |
| 練習のない平日の家 | 向く | ガイドラインが言う「休養日」に当たらない日なら、短時間で置ける |
| 休養日 | 向かない | 休むために置かれている日。ここを埋めると、基準を守った意味がなくなる |
| 試合の前日 | 向かない | 当日に疲れが残る可能性がある。前日の過ごし方は別記事にまとめている |
試合前日の過ごし方は卓球の試合で緊張するに、当日の持ち物は卓球の試合の持ち物にまとめています。
やってはいけない3つ
① 練習時間を筋トレに置き換える
前に見たとおり、ゆっくりやる筋トレ(2.8〜3.8メッツ)は卓球(4.0メッツ)より軽い運動です。台に立てる時間を筋トレにあてると、運動量も、卓球の練習量も、両方減ります。
② 痛みがあるのに続ける
体のどこかが痛い状態で負荷をかけるのは、筋トレの話ではなく怪我の話になります。卓球で多い痛みの出方と、受診の目安は卓球の怪我にまとめました。痛みがある日は、筋トレも練習も止めてください。
③ 数字だけを追う
腕立て伏せが何回できるかは、卓球の強さを表す数字ではありません。メッツ表が示しているのは運動の強さであって、卓球の上達とのつながりではありません。回数の記録を目的にすると、フォームが崩れたまま数を増やすことになります。
小学生・中学生で気をつけること
ガイドラインが活動時間の上限を決めた理由は、成長期にある生徒が学校内外の活動・食事・休養・睡眠のバランスを保てるようにするためだと明記されています。この趣旨は、筋トレにもそのまま当てはまります。
- 重さを足さない——この記事の5種目はすべて自分の体重だけで行うもの。器具を足す前に、正しい形でできるかを見る
- 時間を足さない——部活と合わせた1週間の合計が11時間程度を超えないようにする
- 眠る時間を削らない——ガイドラインが並べているのは活動・食事・休養・睡眠のバランス。筋トレのために夜更かしをするなら、やらないほうがよい
小学生の場合は、そもそも筋トレの前に台の上で球に触る回数を増やすほうが先です。年齢別の始め方は卓球は何歳から始められる?、子どもの練習の考え方は卓球を子どもに習わせるにはにあります。
走り込みはどうなのか
卓球部で走り込みをする学校はよくあります。これをどう考えるかも、時間の話に戻ります。
週11時間程度という枠の中で、走ることに30分を使えば、その30分は台に立てません。卓球は1本ずつが2〜3秒で、間に休みが入る競技です。長い距離を一定の速さで走り続ける動きとは、体の使い方がはっきり違います。
限られた時間で球に触る回数を増やしたいなら、多球練習のほうが直接的です。1人が球を出し続けるので、同じ10分でも打てる本数が数倍になります。やり方と注意点は卓球の多球練習にまとめました。
多球練習には数を用意した練習球が要ります。当店ではTWC スクール・トレーニングボール 40+(100球入り)が¥3,850です。球の種類の違いは卓球の試合球と練習球の違いにあります。
今すぐ確かめる手順:次の練習で、自分が何本打ったかを数えてみてください。正確でなくて構いません。走っている時間、順番を待っている時間、球を拾っている時間を引くと、実際に打っている時間がどれだけ短いかが分かります。
よくある質問
まとめ
数字で見ると、卓球は4.0メッツ。ウェイトを使った複合的な筋トレ(8〜15回)は3.5メッツ、道具なしの体操は労力しだいで2.8〜8.0メッツです。きつさを足すために筋トレをする理由は薄いことが、この並びから分かります。
意味があるのは向きです。卓球は上下方向にほとんど力を使わないので、スクワット・ランジ・ジャンピングジャック・腕立て伏せ・腹筋運動の5つでその穴を埋めます。合わせて10分です。
置く場所は練習の前後10分。休養日には足しません。文部科学省のガイドライン(令和7年12月)は週2日以上の休養日と、週当たり11時間程度という目安を示していて、その休養日は休むために置かれているからです。
そして、台に立てる時間は台に立つことに使ってください。限られた時間で球に触る回数を増やしたいなら、走り込みより多球練習のほうが直接的です。
用具えらびのチェックリスト(PDF)をお送りします
はじめて道具をそろえるときに「何を・どの順番で決めるか」を1枚にまとめたものです。印刷して、そのままお店で使えます。あわせて、ラバーを貼った状態で届く貼り上がり完成ラケット(来春の予約企画)の先行案内もお届けします。
