卓球の教え方|初めての人に教えるときの順番と声のかけ方

【本記事について】
本記事は「卓球スタートショップ」が運営する情報メディア「卓球はじめの一歩」の記事です。記事内で紹介している商品には、当店で販売しているものが含まれます。

卓球を始めたばかりの人に教えるとき、いちばん多い失敗は一度にたくさん伝えてしまうことです。「ひじを下げて、腰を回して、面をかぶせて、最後まで振り切って」——4つ言われたら、人はどれもできません

この記事は、お子さんに教える保護者の方、後輩を見ることになった部員、経験の浅いまま顧問になった先生に向けて書きました。最初の3回で教えること・指示のしかた・声のかけ方・練習の区切り方を順番に整理しています。

教える前に決めること

教え始める前に決めておくと楽になるのは、「今日は何を教えないか」です。教えたいことは山ほどありますが、1回に入るのは1つか2つだと思ってください。

入れること入れないこと
1回目ラケットの持ち方/ボールに当てるフォーム・回転・ルール
2〜3回目フォアハンドで打ち合うバックハンド・サーブの種類
4回目以降バックハンド、簡単なサーブ試合の戦い方
ずっと後回転・戦型・用具の細かい話——

とくに1回目に「フォームを直す」ことをしない——これが大事です。まだボールに当たっていない段階でフォームを言われても、直す対象が本人の中にありません。まず当たるようになってから、形の話に進みます。

最初の目標は「楽しい」ではなく「当たる」
「楽しませよう」とすると、何をすればいいか決められません。目標を「ラケットにボールが当たる」に置くと、やることがはっきりします。当たるようになると、たいていの人は自分から続けたくなります。楽しさは結果で、目標ではありません。

最初の3回で教えること

順番を決めておくと、迷わずに進められます。1回30分〜1時間くらいを想定しています。

やることできたと言える目安
1回目握り方 → 手で投げた球を打つ10球中5球ラケットに当たる
2回目台をはさんで、近い距離から打ち合う3往復続く
3回目少し下がって打ち合う/簡単なサーブを1つ5往復続く/サーブが10球中5球入る

1回目に手で投げた球を打たせるのには理由があります。台をはさんでラリーをすると、球がどこに来るか分からないので当たりません。手で山なりに投げれば、来る場所も高さも一定になります。当たる経験を先に作るほうが、その後が早く進みます。

数える人がいると変わります
教える側は「何球当たったか」を数えて伝えてあげてください。打っている本人は覚えていません。「さっきは3球、いまは6球」と言われると、本人が自分の変化に気づけます。これは、ほめ言葉より確実に伝わります。

指示は1回に1つ

これが、教え方でいちばん効く原則です。1回の練習で直すことを1つに絞る。気になるところが3つあっても、伝えるのは1つです。

一度に4つ指示されて混乱している様子と、1つだけ伝えられて分かりやすい様子を並べた図
やりがちなこと何が起きるか代わりにすること
一度に3つ言うどれもできず、本人が混乱する1つに絞る
打つたびに声をかける考える時間がなくなる10球ごとに1回
できていないことを並べる何をすればいいか分からないいま直す1つだけを言う
言葉が長い覚えられない10字くらいで言う

伝えるときは短く、体で分かる言葉にします。「もっと丁寧に」「しっかり振って」では、何をすればいいか分かりません。「ひざを曲げる」「面を下に向ける」「最後まで振る」——このくらい具体的な言葉なら、その場で試せます。

確かめ方
次に教えるとき、伝えた指示の数を数えてみてください。30分で5つ以上言っていたら、多すぎます。1回の練習で1〜2つに収まっているか——これは教える側が自分で確かめられる、数少ない指標です。

「どうだった?」と聞かない

打ったあとに「今のどうだった?」と聞きたくなりますが、これは答えにくい質問です。良いか悪いかを判断できる段階ではないからです。

代わりに聞くのは、本人が感じ取れる「もの」についてです。答えが1つに決まる質問なら、初めての人でも答えられます。

聞かないほうがよい代わりに聞くこと
今のどうだった?ボールはネットより高かった?低かった?
できてる?打ったとき、体重は前の足だった?後ろの足だった?
分かった?いまの音、さっきより大きかった?
ちゃんとやってる?10球のうち何球入った?

右側の質問には正解があります。だから答えられるし、答えているうちに自分の体で起きていることに目が向きます。「どうだった?」は、教える側が本人に判断をゆだねているようで、実は答えようがないのです。

ほめるときの言い方

ほめ方にもコツがあります。「センスがある」「上手」「すごい」では、次に何をすればいいか分かりません。本人が再現できる形でほめます。

言い方なぜそうするか
◯(動作)→(結果)で言う例:「ひざを曲げて入ったから、低い球が返った」=何をしたから良かったのかが分かる
◯ 数字で言う例:「さっき3球、いま6球」=変化がはっきりする
× センス・才能本人にはどうしようもない。次に活かせない
× 上手・すごい嬉しいが、何が良かったのかが伝わらない

ポイントは「本人がやったこと」を言葉にすることです。結果だけをほめると、うまくいかなかった日に何も言えなくなります。動作をほめていれば、入らなかった日でも「今のは足がちゃんと動いてた」と言えます。

伸び悩んでいる時期こそ、動作を見る
始めて数か月たつと、目に見える上達が止まる時期が来ます。そのときに「最近どう?」と聞くと、本人も困ります。「今日は足が最後まで動いてたね」のように、結果ではなくやっていたことを伝えてください。見てもらえているという事実のほうが、この時期には効きます。

うまくいかないときの3ステップ

教えたのにできない、前より悪くなった——必ず起こります。そのときに「違う」「ダメ」と言わないための、3つの順番です。

すること言い方の例
今どうなっているかを一緒に確かめる「いま、ボールはどこで当たってる?」
別のやり方を1つだけ出す「一回、もっと近くで打ってみようか」
次に何を見るかを決める「10球やって、何球入るか数えよう」

この3つに共通しているのは、「できていない」という評価をしていないことです。①で現状を確かめ、②で選択肢を出し、③で確かめ方を決める。3つとも、本人が次にやることが決まる言葉になっています。

直らないときは、前の段階に戻す
2〜3回試してもうまくいかないなら、その課題はまだ早い可能性があります。一つ前の段階(近い距離・ゆっくりの球・手で投げる)に戻してください。戻すのは失敗ではありません。できる形でたくさん打つほうが、できない形で粘るより前に進みます。

練習の区切り方

同じことを続けすぎると、途中から体が勝手に動くようになり、直したいことを確かめられなくなります。区切りの目安を決めておいてください。

目安
1つの練習の長さ20球、または5分まで
そのあとにやることコースが決まっていない形を少し混ぜる
難しくするとき10球中9球できるようになったら
やさしくするとき10球中5球を下回ったら
全体の長さ始めたばかりなら30分〜1時間

決まった形でできるようになったら、すぐに「どこに来るか分からない形」を混ぜてください。そこで成功率は落ちます——それは正常です。先にそう伝えておくと、本人も落ち込みません。

「ここからは入らなくなるよ」と先に言う
難しくする前に「今度は入る数が減るからね」と伝えておく——これだけで、本人の受け止め方が変わります。言わずに難しくすると、本人は自分が下手になったと感じます。予告するのは、教える側にしかできないことです。

やらないほうがいいこと

やりがちなことなぜよくないか
いきなり試合をさせるまだ打てないので、待っているだけの時間になる
フォームを最初から直す当たっていない段階では直す対象がない
強く打たせる当たらなくなる。速さは最後でよい
できない理由を説明する長い説明は覚えられない。1つ試させるほうが早い
他の人と比べる自分の変化に目が向かなくなる

この中でとくに多いのが「いきなり試合」です。試合は楽しそうに見えますが、打てない段階では球が続かず、拾っている時間のほうが長くなります。打ち合いが5往復続くようになってからで十分です。

相手が子どものとき

小学生くらいの子に教えるときは、集中が続く時間が短いことを前提に組み立てます。大人と同じ長さで同じことを続けると、途中から手が止まります。

目安理由
1つの練習3〜5分飽きる前に切り替える
全体の長さ30分くらいから短くても、続けば積み上がる
声をかける回数10球に1回打つたびに言うと考えられない
数を数える毎回自分の変化が数字で見える
できたときその場で動作を言葉にするあとでまとめてほめても伝わらない

子どもに効きやすいのが数を数えることです。「上手になったね」より「さっき3球、いま6球」のほうが、本人にはっきり届きます。自分の変化を自分で確かめられる——これが続ける力になります。

道具のことで先に確かめてほしいこと
子どもが大人用のラケットを使っていると、重くて振り切れず、フォームが崩れます。教えても直らないときは、教え方ではなく道具が合っていないことがあります。目安は小学生の卓球ラケットの選び方にまとめました。

教える人が複数いるとき

部活では、先輩が何人かで後輩を見ることがあります。このときに起こりやすいのが、人によって言うことが違うという問題です。

起きることどうするか
言うことが人によって違うその日に教える1つを、先に決めて共有する
複数人が同時に声をかける1人が担当を決める。他の人は口を出さない
前の人と違うことを言いたいその場では言わず、あとで教える側同士で話す
誰も見ていない時間ができる順番と担当を先に決めておく

教わる側から見ると、2人に違うことを言われた時点で、どちらも実行できません。技術的にどちらが正しいかより、その場で1つに決まっていることのほうが大事です。

練習の前に30秒だけ
教える側が2人以上いるなら、練習前に「今日はこれを教える」と一言そろえておいてください。30秒で終わります。これをやるかどうかで、教わる側の進み方がはっきり変わります

用具の相談を受けたら

「ラケットは何を買えばいい?」と聞かれたとき、先に確かめてほしいことが1つあります。

確かめること理由
部活や教室で指定があるか指定があれば、それが最優先。買い直しを防げる
借りられるものがあるか部の備品や兄姉のお下がりで足りることがある
続けるか決まっているか数回試してから買うという選択もある
重さが合っているか小学生や力に自信がない場合は軽いほうが振りやすい

用具そのものの選び方は卓球ラケットの選び方卓球を始めるのに必要なものにまとめています。買う前に指定の有無を確かめる——これだけで、いちばん多い失敗を防げます。

部の運営そのものを任された方へ。最初の1か月に決めること(安全・場所・時間・登録・お金)は卓球部の顧問になったら|未経験の最初の1か月にまとめています。

よくある質問

Q自分も初心者ですが、教えられますか?
A.教えられます。最初に必要なのは技術の知識より、球を出してあげることと数えてあげることだからです。手で山なりに投げる、当たった球数を数える——これだけで相手は前に進みます。
Q一度にいくつまで教えていいですか?
A.1回の練習で1つか2つです。3つ以上言うと、どれもできません。気になるところが多くても、伝えるのはいちばん大事な1つに絞ってください。
Q「今のどうだった?」と聞くのはよくないのですか?
A.始めたばかりの人には答えにくい質問です。良し悪しを判断できる段階ではないからです。「ネットより高かった?低かった?」のように、答えが1つに決まる質問にすると答えられます。
Qほめ方が分かりません
A.「本人がやった動作 → その結果」の形で言ってください。例:「ひざを曲げて入ったから、低い球が返った」。「センスがある」「上手」は嬉しくても、次に何をすればいいかが伝わりません
Q教えたのにできるようになりません
A.2〜3回試してできないなら、その課題がまだ早い可能性があります。一つ前の段階(近い距離、ゆっくりの球、手で投げる)に戻してください。戻すのは失敗ではありません。
Qいつから試合をやらせていいですか?
A.打ち合いが5往復くらい続くようになってからで十分です。それより早く試合をすると、球が続かず、拾っている時間のほうが長くなります。
Q練習はどれくらいの長さがいいですか?
A.始めたばかりなら30分〜1時間で構いません。1つの練習は20球か5分で区切り、そのあとに少し違う形を混ぜると、覚えたことが定着しやすくなります。

まとめ

卓球を教えるときの原則は「1回に1つ」です。気になるところが3つあっても、伝えるのは1つ。短く、体で分かる言葉で言います。

最初の目標は「ラケットにボールが当たる」。フォームを直すのは、当たるようになってからです。手で投げた球を打たせるところから始めると、当たる経験を早く作れます。

そして——「今のどうだった?」ではなく「ネットより高かった?」「上手」ではなく「ひざを曲げたから低い球が返った」。答えられる質問と、再現できるほめ方——この2つが、教える側にできるいちばん大きなことです。

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