本記事は「卓球スタートショップ」が運営する情報メディア「卓球はじめの一歩」の記事です。記事内で紹介している商品には、当店で販売しているものが含まれます。
ラバーのスポンジに塗って弾みを上げる「ブースター(補助剤)」。使っていいのか——公式の試合では使えません。ITTFの競技規定 3.4.2.2 が、ラバーは承認されたそのままの状態で使うこととしたうえで、「とりわけ、いかなる添加物も使ってはならない」と名指しで書いています。「グレーゾーン」ではなく、条文に直接書かれている話です。
この記事では、ブースターが何なのか、禁止している条文3つ、実際にどうやって見つかるのか(ラケット検査で何を測るか)、不合格だとどうなるか、4年間で4回の不合格がどうなるか、スピードグルーとの関係、そしてやってよい手入れまでをまとめます。出典はITTF Statutes 2025で、条文番号を添えます。
接着剤とシートの選び方は卓球ラバーの接着剤と貼り付けシート、日々の手入れは卓球ラバーの手入れにあります。この記事はブースターと、ラケット検査の決まりだけを扱います。
まず即答|条文に「添加物を使ってはならない」と書いてある
- 公式の試合では使えない——ITTF 3.4.2.2「とりわけ、いかなる添加物(additives)も使ってはならない」
- ラバーは「承認されたそのまま」で使う——打球特性・摩擦・外観・色・構造・表面を変える処理はすべて対象
- 検査で分かる——ラケットコントロールで、平坦性・厚さ・層の均一性・有害または揮発性の物質の有無を測る(3.2.4.2.1)
- 4年で4回落ちると12か月の資格停止——3.2.4.3
「みんな使っている」「バレなければいい」という言い方を聞くことがありますが、条文の側はあいまいにしていません。この記事では、規則が何をどう書いているかだけを見ます。
今すぐ確かめる手順:いま使っているラバーを貼るときに、何を塗ったかを思い出してください。「ラバーを板に貼るための接着剤」以外のものをスポンジ側に塗っていたなら、それがここでいう添加物にあたる可能性があります。
ブースター(補助剤)とは何か
ブースターは、ラバーのスポンジ側に塗って、ゴムを膨らませる液体の総称です。「補助剤」「チューナー」などとも呼ばれます。ラバーを板に貼るための接着剤とは目的がまったく違います。
| ブースター(補助剤) | ラバー用の接着剤 | |
|---|---|---|
| 何のために塗るか | ラバーの性質を変えるため | ラバーを板にくっつけるため |
| どこに塗るか | スポンジ側(板に貼る前に、何度も) | 板とラバーの接する面に1回 |
| 起きること | スポンジが膨らみ、反りが出て、弾みと回転が変わる | くっつくだけ。性質は変わらない |
| 規則上の扱い | 使えない(ITTF 3.4.2.2) | 使う。ただし有害な揮発性溶剤を含まないもの(3.2.4.1) |
つまり「塗る=ぜんぶだめ」ではありません。板に貼るための接着剤は必要な道具です。線引きは「ラバーの性質を変えるかどうか」にあります。
禁止している条文3つ
| 条文 | 書いてあること |
|---|---|
| ITTF 2.4.7 | ラバーは物理的・化学的・その他の処理をせずに使う |
| ITTF 3.4.2.2 | ラバーはITTFが承認したそのままの状態で、打球特性・摩擦・外観・色・構造・表面などを変えたり改造したりする物理的・化学的・その他の処理をせずに使う。とりわけ、いかなる添加物も使ってはならない |
| ITTF 3.2.4.1 | ラバーを板に貼る接着剤は有害な揮発性溶剤を含まないものを使う。これを確かめる責任は各選手にある |
3.4.2.2の最後の一文が、この話の中心です。「処理をしてはいけない」という一般的な禁止に加えて、「とりわけ添加物は」とわざわざ念を押しています。ブースターはこの文にまっすぐ当たります。
ITTF 2.4.7.1との違い
一方で、ITTF 2.4.7.1は「表面の連続性や色のわずかなずれ、役に立つ/保護のための取り付け物は、表面の特性を大きく変えない限り認められる」としています。サイドテープのような保護の品はここで許されます。「表面の特性を大きく変えない」——これが分かれ目です。サイドテープの話は卓球のサイドテープにまとめました。
どうやって見つかるのか|ラケット検査
ITTF 3.2.4.2は、世界選手権・オリンピック・パラリンピックなどにラケットコントロールセンター(検査所)を設置すると定めています。大陸・地域の大会にも置かれることがあります。
- 平坦性——板が反っていないか
- ラバーの厚さ——接着剤込みで4.05mm未満か(ITTF 2.4.3)
- 層の厚さの均一性と連続性——部分的に膨らんでいないか
- 有害または揮発性の物質の有無——ここでブースターや溶剤入りの接着剤が引っかかる
つまり検査は、目で見て判断するのではなく測ります。「塗ったかどうか」ではなく、残っている物質と、厚さ・反りの数値で判定されます。
検査はいつ行うか
ITTF 3.2.4.2.2は「通常、ラケット検査は試合の前に行う。試合後の検査は、試合前に間に合わなかった場合や、試合前に実施できなかった検査に限って行う」としています。
またITTF 3.2.4.2.4により、すべての選手は、試合前に罰則なしで自主的に検査を受ける権利があります。不安があるなら、先に見てもらえばよい——という仕組みです。
検査に通らないとどうなるか
| 場面 | 結果 | 条文 |
|---|---|---|
| 試合前の検査に不合格 | そのラケットは使えない。時間があれば2本目をすぐ検査してもらえる。無ければ試合後に検査 | 3.2.4.2.3 |
| 試合後の抜き打ち検査に不合格 | その選手は罰則の対象になる | 3.2.4.2.3 |
| 4年間で累計4回の不合格 | その大会は最後まで出られるが、その後執行理事会が12か月の資格停止にする | 3.2.4.3 |
注目してほしいのは「累計4回/4年間」という数え方です。1回の不合格でただちに終わりではありませんが、記録は年をまたいで残ります。
なお、中学・高校の地域の大会でラケットコントロールセンターが置かれることはほとんどありません。それでも規則が変わるわけではありません。検査の有無と、使ってよいかどうかは別の話です。
スピードグルーとの関係
かつて「スピードグルー」と呼ばれる、揮発性の溶剤を含む接着剤を貼る直前に塗る方法が広く行われていました。いまはITTF 3.2.4.1が「ラバーを板に貼る接着剤は、有害な揮発性溶剤を含まないものを使う。これを確かめる責任は各選手にある」と定めています。
だから当店を含め、いま卓球用として売られている接着剤は水溶性です。例えばフリー・チャック2-L(100ml)は水溶性の接着剤で¥1,650、説明にも「JTTA公認」と書かれています。
- 卓球用として売られているか——文具のりや瞬間接着剤は、そもそも別の物
- 水溶性と書かれているか——有害な揮発性溶剤を含まないことの目安になる
接着剤とシートのどちらを買うかは卓球ラバーの接着剤と貼り付けシートにまとめています。
では、やってよい手入れは何か
「性質を変える処理はだめ」と聞くと、手入れ自体をためらう人がいますが、そうではありません。汚れを落として元の状態に戻すことは、性質を変える処理ではありません。
| やること | 規則上の扱い | 道具 |
|---|---|---|
| ほこりを拭き取る | 問題ない | 乾いた布、ラバー用クリーナー |
| 保護シートを貼って保管する | 問題ない | 粘着タイプ/吸着タイプの保護シート |
| サイドテープを巻く | 保護のための取り付け物として認められる(ITTF 2.4.7.1) | サイドテープ |
| ラバーを貼り替える | 問題ない | 水溶性の接着剤、または貼り付けシート |
| スポンジに何かを塗る | できない(ITTF 3.4.2.2) | —— |
手入れのやり方は卓球ラバーの手入れ、粘着ラバーの保管は卓球の粘着ラバーにまとめました。
そして、弾みが落ちたと感じたら、それは張り替えの時期です。ラバーは消耗品で、元に戻す方法はありません。替えどきの考え方は卓球ラバーの張り替え料金と時期にあります。
今すぐ確かめる手順:いま使っているラバーを指でなぞって、表面がつるつるになっていないかを確かめてください。新品のときの引っかかりが無くなっているなら、何かを塗るのではなく、替える段階です。
中学・高校の大会ではどうか
地域の大会では、ラケットコントロールセンターが置かれることはまずありません。それでも、次の2つは変わりません。
- 規則は同じ——ITTF 3.4.2.2は競技規定であって、検査の有無で内容が変わるものではない
- 試合前にラケットを見せる場面はある——ITTF 2.4.8により、試合の前に相手と審判にラケットを見せて調べさせる
また、ラバーが現在ITTFに承認されているものであることと、ロゴとメーカー名が柄に近い側ではっきり見えるように貼ることは、ITTF 3.2.1.3で求められています。この点は卓球ラケットの中古は大丈夫?で中古の話として詳しく書きました。
顧問や保護者の立場で気になる人は、「ラバーには何も塗らない。貼るための接着剤だけ使う」——この1行を部の約束にしておけば足ります。
よくある質問
まとめ
ブースター(補助剤)は公式の試合では使えません。ITTF 3.4.2.2が、ラバーは承認されたそのままの状態で使うこととしたうえで、「とりわけ、いかなる添加物も使ってはならない」と書いています。あいまいな話ではありません。
検査は測って判定します。平坦性・ラバーの厚さ・層の均一性と連続性・有害または揮発性の物質の有無(ITTF 3.2.4.2.1)。試合前に不合格ならそのラケットは使えず、4年間で累計4回で12か月の資格停止です(3.2.4.3)。
一方で、貼るための接着剤は必要な道具です。条件は「有害な揮発性溶剤を含まないもの」(3.2.4.1)。いま売られている卓球用の接着剤は水溶性です。
線引きは「ラバーの性質を変えるかどうか」。拭く・守る・貼り替えるは問題なく、スポンジに何かを塗るのはできません。弾みが落ちたら、それは張り替えの時期です。
用具えらびのチェックリスト(PDF)をお送りします
はじめて道具をそろえるときに「何を・どの順番で決めるか」を1枚にまとめたものです。印刷して、そのままお店で使えます。あわせて、ラバーを貼った状態で届く貼り上がり完成ラケット(来春の予約企画)の先行案内もお届けします。
