本記事は「卓球スタートショップ」が運営する情報メディア「卓球はじめの一歩」の記事です。
車いす卓球は、別の競技ではありません。使う台もボールも同じで、11点先取もサーブの16cmも同じです。ITTFの競技規則の中に、車いすの選手に関する条文がふつうのルールの一部として書かれている——という形になっています。違うのは、この記事でまとめる5か所だけです。
この記事では、台と会場の決まり(脚はエンドラインから40cm以上)、サーブがレット(やり直し)になる3つの場合、打つときの3つの反則、ダブルスの返球順とセンターラインの決まり、そして同じままのところをまとめます。出典はITTF Statutes 2025「The Laws of Table Tennis」および「Regulations for International Competitions」で、条文番号を添えます。
卓球の基本ルールは卓球は何点先取?、台の寸法は卓球台の大きさと高さにあります。この記事は車いすの選手に関わる条文だけを扱います。
まず即答|違うのは5か所だけ
- 台と会場——台の脚はエンドラインから40cm以上離す(ITTF 3.2.1.4)。競技空間は8m×6mまで小さくしてよい(3.2.3.1)
- サーブ——レシーバーのコートに触れたあとネットの方へ戻る・止まる・サイドラインから出ると、やり直し(2.9.1.5)
- 打つときの姿勢——太ももの裏で座面との接触を保つ。台に手をつかない。足が床に触れない(2.10.1.14)
- ダブルスの返球順——少なくとも1人が車いすのペアは、3球目からどちらが返してもよい(2.8.3)
- ダブルスの位置——センターラインの仮想延長線を越えない(2.10.1.15)
逆にいえば、それ以外はすべて同じです。台の大きさ(274×152.5cm、高さ76cm)も、ネットの高さ(15.25cm)も、ボール(40mm・2.7g)も、11点先取も2点ごとのサーブ交代も変わりません。
今すぐ確かめる手順:卓球台を横から見て、台の脚が、エンドラインからどれくらい内側にあるかを確かめてください。ここが40cm以上あるかどうかが、車いすで台に近づけるかどうかを決めます。一般向けの台でも、脚の位置は商品によって違います。
台と会場の決まり
| 項目 | 決まり | 条文 |
|---|---|---|
| 台の脚の位置 | 車いすの選手のために、台の脚はエンドラインから最低40cm離れていること | ITTF 3.2.1.4 |
| 競技空間の広さ | 通常は14m×7m×高さ5m以上。車いすの種目では縮めてよいが、8m×6mを下回らないこと | ITTF 3.2.3.1 |
| 床 | 明るい色・強く反射する・滑る床は不可で、弾力性があること。ただし車いすの種目では硬い床でもよい | ITTF 3.2.3.8 |
この3つは、会場を用意する側が知っておくことです。特に台の脚の40cmは、車いすが台に正面から近づけるかどうかを直接決めます。脚が内側に入りすぎている台では、体を台に寄せられません。
台の寸法そのものは卓球台の大きさと高さ、台の選び方は卓球台の選び方にまとめています。
サーブ|やり直し(レット)になる3つ
レシーブする側が身体の障がいにより車いすの場合、サーブが他の点で正しいことを前提に、次の3つはすべてレット(やり直し)になります(ITTF 2.9.1.5)。
| 起きること | 扱い | 条文 |
|---|---|---|
| ボールがレシーバーのコートに触れたあと、ネットの方向へ戻っていった | レット | 2.9.1.5.1 |
| ボールがレシーバーのコートの上で止まった | レット | 2.9.1.5.2 |
| シングルスで、ボールがコートに触れたあとどちらかのサイドラインから出た | レット | 2.9.1.5.3 |
この3つに共通するのは、車いすの位置からは届かない場所へボールが行ってしまう状況だという点です。強い下回転や横回転のサーブを短く出すと、バウンドしたあと戻る・止まる・横に出ることが起こります。
立って打つ卓球では、これらはすべてサーバーの得点です。そこが変わる、というのがこの条文の意味になります。レットの一覧は卓球は何点先取?、エッジやネットインの扱いは卓球のエッジ・レットとはにまとめています。
サーブそのものの決まり(16cm以上上げる・手のひらを開く・隠さない)は変わりません。卓球のサーブのルール5つにあります。
打つときの3つの反則
両方の選手(またはペア)が身体の障がいにより車いすの場合、次のことをした側の相手に得点が入ります(ITTF 2.10.1.14)。
- 打球の瞬間に、太ももの裏で座面またはクッションとの最低限の接触を保っていない(2.10.1.14.1)
- 打球の前に、どちらかの手で台に触れた(2.10.1.14.2)
- プレー中に、フットレストまたは足が床に触れた(2.10.1.14.3)
3つとも「座った状態を保つ」ことを求める条文です。立ち上がる・腰を浮かせる・台に手をついて体を持ち上げる——こうした動きで有利にならないようにする、という趣旨で読めます。
1つ目の「太ももの裏で座面との接触を保つ」という書き方に注目してください。完全に座り続けろ、ではなく「最低限の接触」を保てばよい、という定め方になっています。
台に手をついてはいけない、との関係
立って打つ場合も、ITTF 2.10.1.11により「空いている手(フリーハンド)が競技面に触れたら相手の得点」です。車いすの場合はどちらの手も対象になる、という違いがあります。
ダブルスの2つの決まり
① 返球の順番
ダブルスは通常、4人が順番に1本ずつ打ちます(ITTF 2.8.2)。ところがITTF 2.8.3は、ペアの少なくとも1人が身体の障がいにより車いすの場合について、こう定めています。
- サーバーがまずサービスをし、レシーバーが返球する。その後は、障がいのあるペアのどちらの選手が返球してもよい。
つまり3球目からは順番の縛りが外れます。車いすでは横に大きく動くのが難しいため、「順番どおりに打てないから失点」という状況を避ける定めです。
通常のダブルスの順番は卓球のダブルスのルール、動き方は卓球のダブルスの動き方にまとめています。
② センターラインの仮想延長線
ITTF 2.10.1.15は、相手のダブルスペアに車いすの選手が少なくとも1人含まれる場合、車いすのどの部分か、立っている選手の足が、台のセンターラインの仮想延長線を越えたら、こちらの得点になると定めています。
ダブルスでは、2人が台の左右に分かれて位置します。その境目(センターラインをまっすぐ後ろへ伸ばした線)を越えない、というのがこの条文です。
同じままのところ
変わらない部分のほうが、はるかに多くあります。主なものを並べます。
| 項目 | 決まり | 条文 |
|---|---|---|
| 台 | 274cm×152.5cm、床から76cm | ITTF 2.1.1 |
| ネットの高さ | 15.25cm | ITTF 2.2.2 |
| ボール | 直径40mm、重さ2.7g、プラスチック製で白か橙 | ITTF 2.3.1〜2.3.3 |
| ラケット | 板の85%以上が天然木。打球面は片面が黒、もう片面は黒ともボールとも区別できる鮮やかな色 | ITTF 2.4.2/2.4.6 |
| サーブ | 手のひらを開いて静止させ、16cm以上ほぼ垂直に上げ、相手から隠さない | ITTF 2.6.1〜2.6.5 |
| 得点 | 11点先取。10オールなら2点差 | ITTF 2.11.1 |
| サーブ交代 | 2点ごと。10オール以降は1点ごと | ITTF 2.13.3 |
| タイムアウト | 1マッチに1回・最大1分 | ITTF 3.4.4.2 |
つまり点の数え方も、サーブの決まりも、用具も同じです。数え方は卓球の点数の数え方、デュースは卓球のデュースとは?にまとめました。
用具は同じものを使う
ラケットもラバーもボールも、立って打つ卓球と同じ規格のものを使います。車いす専用の用具という区分は、ITTFの競技規則にはありません。
- ラケットは同じ——大きさ・形・重さは自由で、板の85%以上が天然木(ITTF 2.4.1/2.4.2)
- ラバーも同じ——現在ITTFに承認されたものを、ロゴが見えるように貼る(ITTF 3.2.1.3)
- ボールも同じ——40mm・2.7g・白か橙(ITTF 2.3.1〜2.3.3)
ラケットの選び方は卓球ラケットの選び方、ラバーは卓球ラバーの種類と選び方、ボールは卓球の試合球と練習球の違いにあります。
握りの力が入りにくい場合、柄を握りやすくするための材料を足すことはITTF 2.4.4で認められています。グリップテープの巻き方は卓球のグリップテープにまとめました。
始めるときに確かめること
会場の側の条件が、ふつうの卓球より効いてきます。見学や体験の前に、次の3つを聞いておくと確実です。
| 確かめること | なぜ | 根拠 |
|---|---|---|
| 台の脚の位置 | 台に正面から近づけるか | ITTF 3.2.1.4(40cm以上) |
| 台のまわりの広さ | 車いすで動ける空間があるか | ITTF 3.2.3.1(8m×6m以上) |
| 会場までの動線 | 入口・通路・更衣室を車いすで通れるか | 競技規則の外の話だが、実際にはここが最初の壁 |
打てる場所の探し方そのものは卓球ができる場所、教室の探し方は卓球教室の探し方にまとめています。問い合わせるときに、上の3つをそのまま聞いてください。
今すぐ確かめる手順:近くの体育館やクラブに問い合わせるとき、「台の脚はエンドラインから40cm以上ありますか」と具体的に聞いてみてください。答えられなくても、その質問で「何を確かめたいのか」が伝わります。
よくある質問
まとめ
車いす卓球は別の競技ではありません。台(274×152.5cm・高さ76cm)もネット(15.25cm)もボール(40mm・2.7g)も、11点先取も2点ごとのサーブ交代も、すべて同じです。
違うのは5か所。台の脚はエンドラインから40cm以上(ITTF 3.2.1.4)、サーブが戻る・止まる・横に出るとレット(2.9.1.5)、打球時に座面との接触を保つ・台に手をつかない・足が床に触れない(2.10.1.14)、ダブルスは3球目から返球順が自由(2.8.3)、センターラインの仮想延長線を越えない(2.10.1.15)。
始めるときにいちばん効いてくるのは、実は条文より会場の側の条件です。台の脚の位置と、台のまわりの広さ。この2つを先に聞いてください。
用具えらびのチェックリスト(PDF)をお送りします
はじめて道具をそろえるときに「何を・どの順番で決めるか」を1枚にまとめたものです。印刷して、そのままお店で使えます。あわせて、ラバーを貼った状態で届く貼り上がり完成ラケット(来春の予約企画)の先行案内もお届けします。
